ホンダFFスポーツを代表するタイプR(DC5 / EP3 前期・後期共)及びisの車両には新しいタイプのトーコントロールリンク・ストラット形式のサスペンションが奢られ、DC5に至っては、軽量アルミ製ロアアームが採用されています。
ノーマルですらFFとは思えない素直なハンドリング特性を持ち、通常走行において快適なことは無論、かつ、一般参加可能なサーキット・スポーツ走行程度までなら十分耐えうるという素晴らしいサスペンションパフォーマンスを有しています。
しかし、レースやサーキット走行、またはハードなサスペンションセッティングを追求していくと、純正装備されているフロントロアアームブッシュによる2つの大きな問題が出て来てしまうのです。
−軟弱なゴムブッシュによって損なわれる走行安定性能−
一つは、このサスペンションのロアアームには大き過ぎるゴムブッシュが採用されている為に、速度レンジが高く、ブッシュ負荷が大きいハード走行を行うと、一般走行では考えられない程の高負荷が掛かり、市販想定以上のゴムブッシュ撓み<タワみ>から不快なアライメント変化を誘発し、ハンドリングに悪影響を及ぼすのです。
通常、自動車のフロントアームのブッシュには、進行方向に対しての縦向きの衝撃(路面の継ぎ目など)つまり、サスペンションの上下ストロークでは吸収できない衝撃を緩和する為に「コンプライアンスブッシュ」と言うゴム製の衝撃緩和ブッシュを配置し、
悪路や街乗りでも快適なハンドリング(コンプライアンス性能)を得るように工夫されています。
そして、この新発想のストラット形状を採用しているDC5やEP3には、特にコンプライアンス方向に衝撃負荷が掛かりやすく、それを軽減するために他のダブルウィッシュボーン形状やマルチリンク形状サスペンションなどと比較すると、かなり大きいサイズのゴムブッシュが採用されています。
そして、このトーコントロールリンクサスペンションの純正コンプライアンスブッシュにはもうひとつ、「コーナリング時に意図的に撓ませ、アウト側のタイヤにトーアングルを発生させる」というホンダとしても珍しい、ゴムブッシュの撓みを利用した「トーコントロール機能」を車体設計段階から付加させています。
ゴムブッシュ周辺がスリ鉢のような形状を模し、意図的にコーナリング時に横方向にのみ撓みやすくした特殊な形状(スグリ形状)のゴムブッシュが採用されているのです。
DC5 / EP3共に、より車格が上がり、車体設計段階からタイプRを設定を盛り込み、サーキットでのスポーツ走行性能向上は無論、一般走行時でも一般乗用車に匹敵する静粛性や快適性を盛り込んだ欲張りな設計、設定をホンダは与えたゆえに、逆にその想定範囲を超越するハード走行ではそれが仇となり、レーシング速度域での走行やサーキットに重点をおいたハードセッティングを追求すると、
●ステアリングインフォメーションが高負荷の一定域から薄くなり「接地感&しっかり感が無い」
●実際のステア量よりも、車体ノーズの向きが変わり難く少なく感じ、修正舵&カウンター量も掴み難く当て難い。
●ハードブレーキングからの進入時に、フロント(キャスター及びトー)のアライメントが変化し、
バタツキ・不安定になる。
●ステアリング反応がワンテンポ遅れるように感じ、舵角・ステア修正が定まらない。
等、ステアリングレスポンスが悪化、ステアリングインフォメーションも悪く感じ、ハンドリング特性自体が不安定となり、限界速度域での走行性能を大きくスポイルしてしまうのです。
万人にも扱いやすいゴムブッシュによるトーコントロール機能や静粛性を配慮し、大きく軟弱な純正ゴム製ロアアームブッシュは、これまでも数々のメーカー車種にも取り入れられて来ましたが、毎回その設定を超えるハード走行時には良い結果を得られないものなのです。そこで、弊社ではその問題のゴム製ブッシュを金属製ピロボールジョイントに変更することでリニアで、ハード走行でも決して乱れない走行安定性能を皆様にご提案しています。
−強化ゴムブッシュでも対応し切れないキャスター不足と変化−
そして、もう一つの問題点が「キャスター変化&不足」です。
キャスター角とは、ご存知のようにフロントタイヤ取り付け(仮想)角度の事です。
キャスター角が多ければ、つまりタイヤ取り付け角度が前方に多く倒れていれば、アメリカンバイクのように安定性が良く直進安定性が向上します。その反面、小回りや取り回しが悪化し易くなります。
逆にキャスター角が少なければ、ハンドリングがクイックにはなりますが直進安定性には劣ると言う傾向があります。
また、キャスター角は曲がった後に自然にステアリングが直進方向に戻ろうとする力(セルフステア特性)にも影響を及ぼします。
元々、DC5やEP3などのFF車両は操舵を兼ねた前輪駆動ですから、進行方向に対しての直進安定性をつかさどるフロントタイヤのキャスター設定角は、FRなどの他の駆動形式よりも少なく設定されています。
DC5のタイプRの場合、1°30'(is = 1°25')とキャスター角は、かなり少ない設定です。
しかし、先ほど述べたようにハードブレーキ時やレーシング速度域など、一般走行とは比較にならない程の大きなブッシュ負荷を与える走行時には、軟弱な純正ゴムブッシュでは撓んでしまうのです。キャスター角を決定付ける、肝心のフロントアーム取り付け部が後退方向に僅かに撓んでしまう事で、キャスター角は1°を割り込む程に減少してしまいます。
つまり、ハードブレーキングを行い、ハンドルを切り込む肝心なシーンで、実質的なキャスター角が不足・変化してしまう事で、更にステアリングがピーキーで不安定になってしまうのです。
これは、我々が数々のチームのDC5車両を製作し、自社からも参戦したインテグラ・ワンメイクレースや耐久レースのDC5車両でも欠点が露呈され、苦労した部分でもあります。
DC5とEP3の足回りのセッティングを更に難しくし、ドライバーからは
「アンダーステアからオーバーステアに急変し、ナーバスになる」や
「ステアが安定せずクリッピングを狙い難い」などと苦情も多く、レギュレーションで定められた無限製の強化ゴムブッシュ(無限から市販されている製品と同等です)だけでは、十分なブッシュ強度が得られず、解消しませんでした。
あまり知られていませんが、参戦していた各チームも、このレギュレーション指定の無限強化ゴムブッシュですら強度不足になるため、頭を悩ませました。
結果的にこれはサスペンションのセッティングだけでは解消出来ません。
強化ブッシュに更にシリコン硬化剤を注入し、各チームで創意工夫で強化加工を施すなど、苦労したのが実体です。
しかし、この経験や試行錯誤で既に我々は、DC5 / EP3のハード走行時のステアリング悪化原因を特定していましたので、ゴムブッシュからピロ化のレギュレーションが認められるS耐や、タイムアタック車両用に、もっとも理想的なロアアーム取り付け設定を施した「ハイキャスターピロボール」を独自で開発しました。
(当社開発後、アフターメーカー各社からも同様のパーツがリリースされていますが、当社が元祖です。)
−当社「ハイキャスターピロボール」の構造と効能−
このパーツの開発当初、我々も他社と同じく、経年劣化が比較的少なく、衝撃吸収に優れた硬質ゴムによる強化ゴムブッシュを幾度と無く試行錯誤しましたが、もともとDC5 / EP3車両のゴムブッシュが占める容積が大きく、ハード走行時に要求される高負荷では、どんなに強化したゴムでも結局は僅かに撓んでしまい、さほど効果は期待できない事も判明していたのです。
購入して頂くお客様には、ピロボール化する事で定期的なメンテナンスや経年劣化は避けることが出来ず、定期的な交換を強いることになってしまうのは、我々としても開発する上で悩みましたが、レーシング速度域でも決して屈しない強靭な金属ピロボールジョイント化を前提に「ブッシュ歪みによるアライメント変化を排除」を最優先に開発しました。
よもや、ファッション要素まで配慮されたような世間のストリート・チューニングパーツの利便性や購入しやすさよりも、数々のレース活動で根本的な原因を明確に突き止め、何よりもその原因を改善し、効能を最優先に開発しているレーシングパーツである事をご理解下さい。
また、先ほど述べたキャスター不足を解消する為に、ロアアームとのジョイント部分に「偏芯マウント」を採用し、ロアアームを実質的に約6mm前方にオフセットさせ、キャスター角を2°30'(誤差±15')に増加させています。
これにより、高速域からのハードブレーキングからの進入時にも安定感が格段に増し、またピロボール化の恩恵でシッカリとしたステアリングインフォメーションを獲ることが出来ます。
ノーマルでは判り難く、曖昧だったステア量も、実に明確に判断でき、舵角が安定します。
また、キャスター角増加の恩恵で、セルフステア特性が飛躍的に向上し、コーナリング時の引っかかり感やステアのコジり感が無くなり、失速感が消え、クリッピングがスムーズに狙えるとレーシングドライバー各位から高評価を頂いております。
また、交差点を曲がった後にハンドルが残るような不快な感覚も消え、スムーズなハンドル復元力も獲られます。
−メンテナンスとアフターケア−
アームジョイントブッシュのピロボール化と聞くと、コトコトと異音が発生し易く、メンテナンスが面倒に感じる方も多いので、当社は特に「メンテナンス性・高寿命」にも配慮しています。
本製品に採用しているベアリングには、精密でレース業界でも定評のある大手「ミネベア社」製と提携し、水洗い程度で十分なメンテナンスフリー性能(オイルレスシール)そして高品質、長寿命である「スフェリカルベアリング(レースパーツ用 高性能ベアリング)」を採用しています。
本製品は、レースやタイムアタックなどのサーキット走行が前提ですが、一般道にて使用される場合も考慮して開発しています。
走行環境や保管状況、路面の荒れ具合によって多少の違いはあると思いますが、購入した皆さんからの統計では、一般道走行も併用した環境でも、約2~3万キロ程度とピロボール化としては驚異的な高寿命だと自負しております。
(*注) 上記の経年数、走行距離劣化数値はあくまでも参考です。使用環境により寿命は大きく左右されるので、本製品の経年、走行距離劣化を保障をするものではありません。
特に異物が噛み込まない限りメンテナンスは不要ですが、砂利や砂はベアリングの劣化を早めますので走行後はこまめに水で洗浄する事をお薦めします。また積雪地方の方は、除雪剤によりベアリングシールが特に傷みやすいので、走行後は必ず水で洗い流してください。
また当製品のベアリングは、シリコンシール採用のオイルレスベアリングなので、水洗いのみで十分です。
ベアリングオイルなどの市販ケミカル剤やブレーキクリーナー等でのメンテナンスは内部シールを痛めてしまいます。(頑固な汚れはアルコール系のクリーナーで落としてください。)
−元祖ならではの安心が自慢です。−
当社が「DC5 / EP3専用 ハイキャスターピロボール」を発売開始して約4年(2002年発売)経過しましたが、高品質ベアリング採用で、ありがたい事に製品によるクレームはゼロ。同じような模造製品が多数社からも出回っていますが、元祖である本製品は、安心感も違います。
購入された皆さんの殆どには、
「思った程も乗り心地は悪化しない」
「ピロ化特有のコトコト音もしない」
「ピロ化は嫌煙されやすいが、この効果を知れば替えて良かった」
「ピロなのにこんなに長寿命とは驚き」
「モヤモヤしていた悩みが晴れ、足回りセッティングの方向性が明確になった」
と、皆さんに喜んでいただき、殆どのお客様がリピーターとして再び購入、交換して頂いております。
(*注) ピロ化により、コンプライアンス吸収性能は排除していますので、大きな段差など、上下以外のサスペンションで吸収しきれない衝撃に「ゴン」と音がする場合があります。そのような大きな段差はピロボールに大きな負担が掛かり、本製品の寿命を縮めてしまうので可能な限り避けて走行する事をお薦めします。常識でありえる舗装路での多少の段差、路面の段差、継ぎ目までなら気にしなくて大丈夫です。
−ハイキャスターピロボール単体購入の方や、業者の皆様へ。−
当社のハイキャスターピロボール製品は、フロントコンプライアンスブッシュ及びロアアームブッシュを打ち替える事で装着可能ですが、ピロの中心点(ロアアームジョイント部)を偏芯させた設計ですので、進行方向に対してロアアームを実質的に約6mm前方にオフセットする事で、キャスター角を増加させます。
従いまして、「ロアアームを車体に装着した状態」で、進行方向に対して確実な偏芯角度を直線延長ラインに合わせて偏芯ピロを打ち込むという、高精度な技術が必要になります。(正確に打ち込まないと左右に正確なキャスター角が得られないばかりか、トー角も変化し、修正出来なくなります。)当社の打ち込み精度は、左右誤差±15’と細心の注意を払って本製品ピロの打ち込みをしています。当社同等の打ち込み精度を必ず守って下さい。
単体購入の方は是非、打ち込み精度の信頼できる全国の弊社推奨ショップでの装着を強くお薦め致します。(弊社、及び弊社推奨ショップ以外での打ち込み失敗等によるクレームは一切受け付けません。)
−価格と販売方法について−
新品ホンダ純正品 ロアアーム+ハイキャスターピロボール圧入済みセット
●EP3専用 鋼製ロアアーム(前期・後期 共通)
(注文番号:HCP - EP3)
定価 86,000円(税別)
ピロボール単品販売
●EP3
(注文番号 :HCP-U-P)
定価 54,000(税別)
圧入するだけのピロボールに、ブッシュをセットにしています。
※作業は自動車専用工場で知識のある方の作業が必要になります。
注文番号と車種タイプをご確認した上で、当社にお問い合わせ下さい。
当社から車種の確認、合計金額、納期、お支払い方法を返答、返信致します。
(当社のレース活動の為、納期がズレ込む場合は事前にお知らせ致します。)
お客様のご入金を確認後、発送致します。
(佐川急便にて発送致します。)
事前にご予約頂き、当社にてロアアーム交換の直接作業も受け付けております。お気軽にご相談下さい。